イルカ&クジラ救援プロジェクト

「人と彼らの相違」

私たちにはあまり知られていない彼らの一面について考えてみましょう。
私たちが考える良い面ばかり持っているわけではないということを先にも触れましたが、彼らの行動は人間にとってはかなり不可解であったり、人間の眼から見ると、いじめと受けとめられるようなこともすることがあるようです。
実際に目撃された以下の2例について考えてみましょう。



新潮社”SINRA” 2000年 6月号 掲載  写真・文章:越智隆治氏   から一部抜粋 

イルカは人になつくと自分の方から擦り寄ってきて、一緒に泳いだり遊んでくれだりする。
彼らには心を病んだ人を癒す力があるともいわれている。
でも、ここにご覧の「魚いじめをするイルカ」の写真。
これは、彼らにもこんな一面がある、優しいだけがイルカじやない、ということを意味している。

フロリダ半島南東部の大西洋海域に浮かぶバハマ諸島。グランド・バハマ島はその最北部に位置している。北部には浅瀬の続くリトル・バハマ・バンクが広がり、通称「ドルフィン・サイト」と呼ばれる北西エリアには、タイセイヨウマダライルカが生息している
もてあそぱれ、いじめ殺された魚
 ドルフィン・サイトに出かけたその日、イルカだちが集団で、1匹のギンガメアジをいじめている現場を・・・。
 きちんと説明すると、そもそも、その問題のギンガメアジは50匹ほどの群れの一員としてこちらに向かって泳いできた。すると、私の周辺にいたイルカだちがスーッと群れに近づいて行き、目をつけたその特定のギンガメアジだけを執拗に追い回し始めた。他のギンガメアジたちはそれを知ってか知らぬかそのまま泳いで行ってしまったのである。
 イルカたちは、ひとりぼっちになった哀れなギンガメアジを食べようとしているわけではない。だいたい、これくらいのサイズの魚になると彼らの餌には大きすぎる。では何をするのかと見ていると、寄ってたかってツンツンとくちばしでつついたり、カパッと目を開いて体全体をくわえ込み、アムアムとあま噛みしては吐き出して遊んでいる。それを皆で順番に行なうものだから、ギンガメアジはもうヨレヨレ。もてあそばれて、回されて、身も心もボロボロといった感じなのだ。生きた心地はしなかっただろう。で、この被害者をよく観察すると、目の中に腫瘍らしきものができていて濁っている。それで視力が弱く、体のバランスが取りにくいのだろうか、泳いていると体がかしぐようになるのだ。そういえば、群れでこちらに泳いてきた時も、遅れがちで最後部にいた。そこをイルカだちに襲われたということなのだろう。
結局ギンガメアジは、3時間近く追いかけ回された挙句死んだ。私自身もその現場に3時間もいたということになる…。
 一方、クルーが撮影したビデオを見せてもらうと、こちらは録音機能付きだから、ギンガメアジを追ってビデオカメラに近づいてくるイルカたちの「シジジー」という音波までを記録。それも音波があまりにも強力なため、音割れの状況を示していた。
 イルカは水中での自分の位置を知るために、仲間とコミュニケーションを取るために、そして餌を見つけるために音波を出す。これらを総じてエコロケーションと言うが、当然ギンガメアジを追い回す時も、皆で「ジジジー」とやっていたわけだ。3時間にもわたって。
 可哀相に、目の不自由なギンガメアジは、小突かれ、噛まれたりしただけでも相当弱ってしまっただろうに、それに加えての長時間の音波攻壁、人間には癒し効果があるといわれる音波が、この魚には死に至るいじめの凶器になっていたのだ。優しいだけがイルカじやない。しかしこれも自然の営みのなせる業か……。合掌。


同朋社”GEO” 1998年 5月号掲載  から一部抜粋

イルカのいじめ
 スコットランドのマレー湾の岸辺には、ネズミイルカの死骸がしばしば打ち上げられる。
獣医チームが検死した結果、140頭のうち42頭(ほとんどがl〜3歳の体長100〜140cmの子ども)の頭部、胸部、背中、脇腹などに打撲傷と内出血が見られた。切り裂かれた脂肪層が筋肉から剥がれてしまっている例も多い。また、38頭のネズミイルカは肋骨が析れ、そのうちの数本が肺に突きささっていた。さらに、脊椎がずれたり折れたりしているために内腹に致命的な損傷をこうむっている例もいくつか見られた。
ネズミイルカたちが何者かに暴力を加えられたことによって命を断たれたことは明らかだった。獣医らはまず皮膚に最初の手がかりを発見した。ほとんどのネズミイルカには、あたかも誰かに巨大なフォークで突きさされて乱暴に振り回されたかのような奇妙な筋がついていた。どの筋も三角形の裂け目を起点にまっすぐ伸ぴている。 これが咬み傷であることはほぼ間違いなかった。
 そこで獣医らは筋と筋の間が何センチ離れているかを測り、歯の間隔が一致する海洋生物のものを捜し出した。犯人はビン形の鼻づらが特徴的なバンドウイルカだった。
 犯人が特定されたのを受け、バンドウイルカの行動を探るための大規模なブロジェクトが実行に移された。およそ130頭のハンドウイルカが生息するマレー湾で、観察は3600時間にも及んだ。ウオッチャーたちは半信半疑で観察に陥んだが、その疑念はたちまち吹き飛んでしまった。
 彼らは成長した大人のバンドウイルカの群れが、たった1頭の子どものネズミイルカを追い回しているのを4度目撃し、そのうちの2度は、30分間に及ぶ追跡劇をビデオカメラに収めることに成功した。犠牲となったネズミイルカは幾度となく頭突きを受け、見る見るうちに弱っていったかと思うと、やがて視界から消えていった。ネズミイルカのその後の運命を知る者はいない。
 バンドウイルカがなぜ、自分たちよりも体の小さな同種の仲間を追い回すのかについては、今のところ解明されていない。エサとなる乏しい資源を守ろうとしているのかもしれないし、ゲーム、戦闘訓練、性的欲求不満、一部のバンドウイルカの逸脱した行為などの可能性も捨てきれない、というのが獣医チームの見解だ。



 さて、これらの事を知って、皆さんはどう感じられましたか?
「こんな事は事実ではない!」、「なにかの間違いでは?!」と考えるでしょうか?
それとも、「どんな動物だってそんな側面はあるさ」って、お考えになられるでしょうか?

私たちが考えるには...

  1. 「私たち人間の考えや倫理観は彼らと違う」ということをまず考えなければいけません。現代社会に生きる人間は、自然の摂理等から考えるとかけ離れた認識、考えをしていると言えるでしょう。
  2. 陸に住む食物連鎖の頂点に立つ野生生物とは違い、自然の中での鯨類は弱っている捕食魚を食べることはまずない。 (海洋汚染問題、健康と遺伝の面から)...ライオンやチーター達も自分が仕留めた獲物以外食べないとのことです。
  3. 野生生物は、身体に奇形や異常があるものは淘汰される。(自然淘汰の摂理)
  4. 食物連鎖の頂点に立つことにより、彼ら自身も危険な状態にある。(海洋汚染問題、それらによりる免疫抵抗力低下の問題)
  5. 一瞬でも気を許すことができない野生の世界では、群れの中に弱っているものがいることで、その群れ全体が危険にさらされる可能性がある。(それを彼らが知っていて実践しているかもしれない)
  6. 彼ら自身がその海域や環境下において、種ごとの数の調節を行っている可能性もあります。(神が、人間に陸上の動植物の管理を任されたように...)
  7. 少し前まで私たち人類が行っていたような儀式的なことを行っているのかも知れません。
  8. 鯨類は同種や人間にそのような攻撃を仕掛けることはありません。(繁殖時、一部の種はメスの争奪において同種のオスを傷つけることはあります)
  9. また、オルカ(シャチ)だけが他の鯨類を襲うとは考えにくい。大型の歯クジラの仲間もその可能性がある。
  10. 人間に向かって尾ビレで叩いたり、有害な(超)音波をあてることは可能。(執拗に追いかけたりするとその可能性があります)

     ※すべてが推測であり、答えにはならないかも知れませんが、以上について皆さんはどうお考えになられますか?

など、いろいろな理由を考慮しなくてはいけないと考えます。
彼らは、私たちのように余裕を持った社会生活を送っているわけではありません。
以前、貧困に苦しんだり(もちろん現在もそうである人々が沢山います)、食物の保存という手段が無かった頃は、私たちも今と違った行動や考え方をしていました。
まだまだ彼らについては分らないことがたくさんありますが、少なくとも私たち人間よりは自然らしく、自然の秩序を乱すことなく、いつまでも地球環境を守り続けることが出来る生物だと言えるでしょう。。。